嶋田知的財産事務所

若手の努力が実る仕事を創り出したい

正林は20名以上の弁理士を擁する大手事務所を率いながら日本弁理士会の副会長と予備校の看板講師も担う気鋭の弁理士である。

今、高齢化が進む日本では1400兆円の個人資産のうち、約8割が65歳以上に保有されているという。高齢者による富の独占は、弁理士業界ではさらにすさまじいと感じる。「弁理士の収入が高すぎるって文句を言う人がいますが、冗談じゃないですよ。若手の実情をよく見てほしい。」

若手の努力が実る仕事を創り出したい。ソフトウェアやバイオテクノロジーなどの先端分野、知的財産の流通や価値評価、著作権や不正競争防止法などの知財周辺分野など、年長の弁理士が敬遠する新しい領域に弁理士業務を開拓しようと地道に努力を続けている。

「会派や弁理士会に頼るな。」尊敬していた先輩の言葉が忘れられない。その先輩が、今では会派の力がないと仕事ができなくなっている。年をとると、牙をもがれ、毒を抜かれ、既得権をもつ団体の歯車の一部となってしまう。複雑な気分だ。

会派で丸められてしまう前に仕事がしたいと思い、会派の推薦を得ないで副会長に立候補した。各会派が一人ずつ候補者を出す予定調和的選挙の慣行に反する異例の事態に、弁理士会は騒然となった。会派からは退会しろと言われ、副会長に当選してからも逆風を強く感じた。さらに、副会長職に時間をとられるうちに自分の事務所の経営に支障が出始めた。

「そこで副会長を辞して事務所の経営に専念していたら、自分も事務所も成長しなかったと思う。」生来の凝り性も手伝ってか、ピンチに陥っても投げ出さないで試行錯誤し続けられる粘り強さが持ち味だ。「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ。」リクルートの社是が気に入っている。

副会長になって再選を繰り返し、もう既に4期目になる。ようやく弁理士会という組織の仕組みがわかってきた。就任した当初は会合に欠席しても何も言われなかったが、最近は「何で来ないんだ」といわれる。そういう小さな変化が嬉しくもある。【2010年11月14日 取材】

正林真之 弁理士(正林国際特許商標事務所 所長)
1994年弁理士登録、1998年正林国際特許商標事務所開設。2007年より日本弁理士会副会長。1997年より弁理士試験の受験指導を通じて数多くの弁理士を育成。現在LEC東京リーガルマインド専任講師(論文マスターシリーズ)