嶋田知的財産事務所

テクノロジーを育て社会と対話する手応えを求めて

青木はパノラマバーチャルショップ構築サービスを中心とした事業を展開するベンチャー企業の社長である。仲間とともに室内空間3Dモデリングやパノラマ画像処理といった独自のテクノロジーを育てる一方で、発展途上国でのビジネスにも熱意を燃やす。

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情報技術は面白い。作ったものがすぐに社会に実装され、反応もすぐ返ってくる。青木にとって、テクノロジーは社会との対話手段でもある。発展途上国での活動が面白いのも、そこで流した汗が、大きな手ごたえとなって返ってくるからだ。そのダイナミズムが青木を魅了してやまない。
子供の頃からボーイスカウトでアウトドアスキルを鍛えた青木は、大学一年生の夏、個人野営プロジェクトを企画し、アメリカとカナダを自転車で約20日間旅行した。この旅行は思いのほか辛いものだった。毎日野営をしていると、泣き出したくなるようなさみしさに襲われた。「何故自分はこんなことをしているのだろうか」自転車をこぎながら深く考えた。この旅が青木にとって大きな転機になった。

「自分のためだけの人生ではなく人に何かをしてあげられる人生を生きたい」そう決心して帰国し、自身の活動の場を発展途上国に移した。大学時代を通じ、バングラデシュやネパールでのボランティア活動に何度も参加し、のめりこんでいった。

修士を終えて、大手電機メーカーに就職した。テクノロジーに可能性を感じてメーカーを選んだが、研究所に配属され、途上国での活動経験を活かす機会が制約された。窮屈に感じ、退社して大学に戻った。博士課程修了間際に同期入社の友人が1人退社してきた。新しい人生を模索していた2人は、2008年に共同で会社を立ち上げることにした。2013年現在、社員は8名まで増えている。

代表取締役社長としての仕事はビジネスを大きくすること。でも、それだけを追求してはいない。独自のテクノロジーを育て、途上国ビジネスを育て、それらをクロスオーバーさせていきたい。誰かのために働ける喜びを社会に作って行くことに大きな意義がある、そう考えている。【2013年12月20日 取材】

青木崇行 (カディンチェ株式会社 代表取締役社長)
2008年にカディンチェ株式会社を共同設立して以来現職。IPA未踏ソフトウェア創造事業開発者(2002年度/2006年度下期)、2009年慶応義塾大学より博士号取得。ネパールでのNPO活動(Pax Earth)、ブータン政府観光局の日本向けWebサイト構築・運営、一般社団法人アスリートソサエティ運営等、会社経営以外にも幅広く活躍中。